連絡もなく訪ねてきたマリーに、ローラは心底驚いた。
 彼女が1年先に孤児院から出てから、今まで会うこともなかったのに。


 彼女の居ないギルモア孤児院の生活は快適で、自分は彼女のことを、どれ程疎ましく思っていたか、離れて初めて気が付けた。
 それなのに、また……


「仕事を探しているの、住む場所もね。
 両方決まるまで、置いてよ」


 小さいメラニーも居るし、うちは狭いし……と、どうにか追い返そうとしていたのに、そこに夫のウィラードが帰ってきた。


 彼を見たマリーの目が光った気がした。
 マリーの性根は変わっていないらしい。
 彼女は人のものほど欲しくなるタイプだ。


 ローラの苛立ちに気付かないウィラードは、妻の幼馴染みだと自己紹介するマリーに、丁寧に対応している。
 それで、流されるように。
 マリー・ギルモアは、ウィラードとローラの家に居候することになった。


  

 信じられないくらいに、ローラの夫は素敵な男だ。
 そんなウィラードがどうして、ローラのようなのろまを嫁にしたのか。

 顔には出さずに、心の中で悪態をついていたら、ウィラードが目の前を横切って。
 それで彼の左足が不自由なことに、気が付いた。