今日は11月にしては暖かく天気が良かったので、応接室の窓は少し開けられていた。
 そこから校庭で遊ぶ子供達の歓声が聞こえる。


「少額と言っても、生前のフェルドンの財産から見て、でしょう。
 ウィラードはそのままフェルドンの家に住み、他の使用人達は解雇になりましたが、年老いた夫婦のみを雇い続けていました」


 15歳の少年が2人だけでも使用人を雇えていたのなら、この頃にスチュワートの援助は始まっていたのかもしれないと、ミルドレッドは思った。


「あの、彼は……ウィラード・フェルドンはどんな人物でしたか?
 スミスさんが彼と最後に会ったのはいつですか?」


 昼休みしか時間を取れないと言われていたからか、イアンは柔らかい口調であったが、スミスに話を進めるように促した。
 いちいち感傷に浸っていたら、話が終わらないからだ。


「いい奴でした。
 明らかに生まれが違うと言うか、見た目も良くて、頭も良かった。
 だから、義理の息子だったけど、フェルドンは期待していたと思いますよ。
 あいつの代になったら、店はもっと大きくなると周囲には言ってたらしいです。
 ……唯一残念なのは、彼は足が悪かったんです」

「足が?悪かった?」

「生まれながらと、本人は言ってました。
 歩けないとかじゃないですよ、左足が早く動かせなくて、引き摺っていました」