「し、しらん。ええかげんにせぇ」
「なによ、奥さんが死んだら結婚しようって言ったのにまだ奥さんのことが忘れられずにいるだなんて!」
「うるさい、そんなこと言った覚えもないし。それに人骨模型の件をおおめにみてやったのはわしだぞ!」
「なによ! 奥さんと同じ身長の人骨模型を経費で落として……かなり高かったわ。あとね2人とも聞いて。これ10万もするのよ!」
「ひえっ」
 希菜子はつい声が出てしまった。校長は顔を引き攣らせる。

「しかもこのケースもそれなりにしますよね。いくらこの学校の跡継ぎとはいえ……私物化して。まだ20代後半、世でいうもう結婚適齢期の女性を欺いて、女子校の校長として最低な人ですね」
 葵がそう言うと校長は腰を抜かして尻もちをついた。
「そう、この男は夜な夜なその人骨模型とその社交ダンスの靴を履いて踊る、滑稽な未練たらたらな最低男よ!」
 やはりそうだったか、と葵は自分の推測が当たったと。希菜子も当たった! と自分のように喜ぶ。

「その姿を見た守衛さんに黙ってもらおうとお金を積んでたけど反対に脅されて……相当な額をもぎ取られてるのよね、ほんと哀れな男。可哀想と思ったけどなんとなく吹っ切れたわ」

 と、御嵩先生は人骨模型のケースの鍵をとりに行くため部屋を出た。
「まだ、待ってくれぇえええ……」

 なんともみっともない姿をする校長。葵たちも居た堪れなくなり御嵩先生のあとをついていくのであった。