「希菜子ちゃん来てくれたのね。お友達と……仲がいいわね」
「え、ええ……渚さんもとても、とても美しくて……あ、由貴さんも前よりも男前でっ!」
葵の告白に狼狽えて何を言っているかわからない希菜子。
コウはすっかり涙はひいていた。葵は複雑なこの3人の関係を聞いた後に初対面で会うのはドキドキしつつも自分が良からぬ妄想を抱いたのを申し訳ないと思った。

「希菜子ちゃん、お友達さんお幸せにね」
と手渡されたのは和風ブーケだった。
「えっ、これ……いいんですか?」
葵と希菜子の両手で受け取る綺麗な花束。

渚と由貴は頷いた。
「じゃあね、お店の皆さんにもよろしくね」
と渚だけお直しで近くに停められた車に乗って行った。続いて由貴もついていく。


コウは握っていた傘を下ろし、痛そうにしている。
「慣れんことしないほうがいいな……暑い」
とおでこから汗を流した。

葵はおやっと思った。さっきの泣いている顔に今の表情が似ている。

コウは目が細くつり上がった狐目のため、顰めっ面の顔も泣いている顔に見えたのだ。そして彼も車に乗っていく。

「希菜子、さっきの話……!」
「……え? なんの話です? 葵さんの気持ちはしかと受け止めましたけどね、ふふ」
希菜子は目にハンカチを当てて笑った。

しかし花嫁花婿たちの三角関係の話が希菜子の作り話かそうでないのか葵は気にしなかった。

いつかは好きな希菜子に思いを言わなくては、と思っていたから。

だがこうして同性同士生まれてきてしまった運命をどう乗り越えればいいのだろうか、それはこれから考えればいいのだろう。
2人はブーケを持って仲良く帰った。

「やっぱあっつー」
「こらこら、また手の甲で汗拭って……ハンカチハンカチー!」