「きっとあの青年は花嫁の元彼。長いこと付き合ってた彼女だった。子供の頃から一緒に結婚式しようね、結婚式するならこの神社で花嫁行列しようねって……」
 ロマンチックに饒舌に語る葵。彼女は昔から本や映画が好きで少し空想癖がある。
 見た目はボーイッシュでクール、現実的な考えしか言わなさそうな出立で周りからもそう思われているのだが幼馴染の希菜子の前ではこうである。

 「しかし都会から来たあの男に今までこの土地の男、スタイルも良い……もちろん彼氏しか知らなかった彼女は心奪われる……ああ、この人が私の運命の人だわって」
 目の前の花嫁と花婿は周りの人たちに手を振る余裕が出たようだ。そして二人は顔を合わせて微笑み合う。

 だが目の前の傘持ちだけは対照的に悲しそうな顔をしている。

 葵はその表情に更なる妄想力が湧き出た。


 「しかも都会の男も彼女に恋をし……幼馴染の男と仲良くなるフリして蹴落として二人は恋に落ちる。互いに運命の人ね、そうよね……って。んで、男は一人になり今回の挙式で傘持ちを任される、花嫁の幼馴染だからと……彼は涙を流しながら彼女との思い出を思い出しながら、憎む思いもあるが彼女が幸せであるのなら……と……あー修羅場、修羅場!」

 葵はふふッと笑う。傍から見たら不気味である。それもこれも昼ドラマ好きな母親の影響もあるのだろう。

 希菜子は葵の妄想が修羅場展開になることはいつものことだと笑う。

 「相変わらずね、でも残念」
 「はい?」