泥棒猫ならぬヤマネコ族の先祖返りヴェロニカ・リュンクスは、『カフェ・フォルコ』の常連客だ。〝殿下、今日も顔がいい!〟と先日イヴに伝言を託した中の一人で、王宮一階で働く淡灰色の髪をした侍女である。
一方、女狐ことキツネ族の先祖返りリサ・ウルペースと、イヴは面識がなかった。
三階宰相執務室付きの、こちらは黄褐色の髪をした侍女だ。宰相の右腕であるクローディアなら知っているだろう。
そんな侍女達が『カフェ・フォルコ』の前で一触即発となったことに、イヴもまったく無関係というわけではなかった。
まずはこの日の昼休憩終了間際──ウィリアムとクローディアが執務室に戻った直後のこと、イヴはある常連客から伝言を頼まれた。
常連客はダミアン・コナーという男性文官で、クローディアと同じく宰相の下で働いている。
週に三度は『カフェ・フォルコ』を訪れる彼の〝いつもの〟はシナモンコーヒー。
コーヒーに後からシナモンパウダーやスティックを入れるのではなく、豆と一緒にシナモンも挽いてドリップしたものだ。
シナモンのように香りの特徴的なスパイスはコーヒーとよく合い、お互いを引き立たせてより豊かな表情になる。
ダミアンは済ました顔でそれに舌鼓を打ちながら、毎回決まってヴェロニカへの待ち合わせの伝言を託してきたものだから、イヴは二人が恋人同士であると思っていたのだが……
一方、女狐ことキツネ族の先祖返りリサ・ウルペースと、イヴは面識がなかった。
三階宰相執務室付きの、こちらは黄褐色の髪をした侍女だ。宰相の右腕であるクローディアなら知っているだろう。
そんな侍女達が『カフェ・フォルコ』の前で一触即発となったことに、イヴもまったく無関係というわけではなかった。
まずはこの日の昼休憩終了間際──ウィリアムとクローディアが執務室に戻った直後のこと、イヴはある常連客から伝言を頼まれた。
常連客はダミアン・コナーという男性文官で、クローディアと同じく宰相の下で働いている。
週に三度は『カフェ・フォルコ』を訪れる彼の〝いつもの〟はシナモンコーヒー。
コーヒーに後からシナモンパウダーやスティックを入れるのではなく、豆と一緒にシナモンも挽いてドリップしたものだ。
シナモンのように香りの特徴的なスパイスはコーヒーとよく合い、お互いを引き立たせてより豊かな表情になる。
ダミアンは済ました顔でそれに舌鼓を打ちながら、毎回決まってヴェロニカへの待ち合わせの伝言を託してきたものだから、イヴは二人が恋人同士であると思っていたのだが……