「怒っているのに──ウィリアム様ったら、こんなにかわいいんですか!?」



 イヴの危機に駆けつけたウィリアムには、毎度のことながらオオカミの耳と尻尾が出現していた。
 モッフモフのフッサフサである。
 イヴの目はもちろん、それらに釘付けだ。

「怒っていてもかわいいなんて……ウィリアム様はすごい」
「んんっ……ではなくて! どうして、わざわざメイソン公爵に近づいたりしたんだ! もしも私が間に合わなかったら、どうなっていたか……」
「それは、抜かりありません。ウィリアム様が駆けつけてくださる頃合いをちゃんと図って行動しましたので」
「それはよかっ──いや、よくない!」

 胸を張るイヴに、ウィリアムは頭を抱える。
 心なしかぺしゃんとした彼のフサフサの耳を、イヴはすかさずモフモフした。
 その胸元のリボンが解けてしまっているのに気づいて、律儀に結び直してやっていたウィリアムだったが、やがて囁くような声で問う。

「メイソン公爵に陛下の命を破らせて、爵位を譲らせるため、か?」
「それは結果です。私はただ、公爵閣下にちゃんと知っていただきたかったんですよ。私の幸せを揺るがすなんて、できないってことを」

 イヴはお返しするみたいに、両手で殊更優しくウィリアムのオオカミ耳を撫でると、大真面目な顔をして言った。

「だって、こんっっっなに、かわいいウィリアム様が側にいてくださるのに、不幸になんてなりようがないと思いませんか!?」
「んぐっ……」
「あっ、耳……ぴるぴるってしました! かわいい!!」
「うぬぅ……」