「私は……タマを危険な目に遭わせたくないんだ……」
「ありがとうございます。私も、できれば危険な目には遭いたくないですけど……でも、ミケと半月も会えないのはもっといや……寂しいです」

 いかにも駄々を捏ねるように言うと、ミケは困った顔をして私の髪を撫でてくる。
 それを鼻で笑ったネコが、鋭い牙を剥き出しにして大欠伸をした。

『ふん、ばかばかしい。茶番じゃな』

 その通り。これは茶番だ。
 国王様の言葉は絶対で、ミケは結局、どうあっても私をラーガスト王国まで同行させなければならない。
 けれど、私自身がそれを望んだとすれば、彼の罪悪感も少しはましになるはずだ。
 自分の心強い味方となってくれたミケの味方に、私もなりたかった。
 そんな私達のやりとりに、国王様は満足そうな顔をする。

「ミケランゼロ、人間が一人きりでできることなど、たかが知れている。家臣を使え。仲間を頼れ。人を見極め、背中を預けられる相手は自分で見つけ出せ。そして──守りたい者を、守れ」
「──はい」

 ミケは、私を連れていく覚悟を決めたようだ。
 そのまま旅程の話になり、出発は二週間後と決定する。

「タマコ殿の荷造りは、王妃にも手伝わせてやっておくれ。あれも、随分と心配しているからな」

 そう言って、国王様が侍従長に支えられて席を立とうとしたところで、私はもう一度右手をピンと上げた。