私は、目の前にあるミケの背中を見上げた。
 多くのものを背負うこの背中を、微力ながら支えようと決めたのだ。
 そのためには、ミケの庇護下でただ成り行きを見守るだけではいけない。
 私はネコを左腕一本で抱え直すと、ミケの背中から顔を出して右手をピンと高く上げた。
 目が合った国王様が、くすりと笑う。

「どうぞ、タマコ殿。何か質問でもあるのかな?」
「……っ、タマ!」

 とたん、ミケがすごい形相をして振り返った。
 黙ってろ、と言いたげなその表情に、思わず首を竦める。
 この世界に来る前なら大人しく口を噤んでしまったかもしれないが、少々図太くなった今の私はそれくらいでは怯まない。

「私とネコ達が一緒に行って、本当にお役に立てますでしょうか?」
「トライアン王子は君に随分懐いているそうだな? タマコ殿が道中寄り添えば、彼としても心強いだろう。また、君が連れているネコ達の癒やしの効果も絶大だ。半年にわたり総督府で奮闘してくれている同胞の慰問にも期待している」
「それは、どのくらいの期間を要しますか?」
「そうだな……国境まで馬車で四日、国境から総督府までは二日。革命軍との会談などのための滞在期間を含め……ここに戻ってくるのは順調にいって半月後だろうな」

 国王様は淡々と話すが、その目は何かを訴えかけるように、じっと私を捉えたままだ。
 ミケも、瞬きを忘れたかのように私を見つめている。
 ふん、とネコが私の腕の中で鼻を鳴らして笑った。