「しかしな、私達はおタマちゃんが来てからのミケランゼロの変化に驚いている。もちろん、うれしい驚きだよ」

 私が来てミケが変わったとは、さっきメルさんも言っていたことだった。
 するとここで、王妃様も話に加わる。

「陛下も私も、おタマちゃんにはとても感謝しておりますの。ミケランゼロを凶刃から守ってくださったことに対しては、もちろんですけれど……」
「かつて救えなかった兄とは違い、君がこうして元気になってくれたこと──それが、ミケランゼロにとっては何よりの救いなんだよ」
「そんな……」

 国王様と王妃様の優しい眼差しから、私はとっさに目を逸らした。
 オイルをぐるぐるとかき回しながら、でも、と呟く。

「私は、たまたまあの時あの場所に来てしまっただけで、意図してミケを庇ったわけじゃありませんし……その後は、ミケやこの国にお世話になるばかりで、何もできていません……」

 俯いて言う私の隣に、子ネコを肩に乗せたまま王妃様がやってきて、そっと背中を撫でてくれた。
 おずおずと顔を上げれば、それこそ聖母のごとく慈愛に満ちた王妃様の微笑みに迎えられる。
 
「おタマちゃんには、ミケランゼロの側にいてもらいたいの。あなたでないと、だめなのですよ?」