「なあーん……」

 気怠そうな鳴き声が聞こえて、過去へ飛んでいた思考が引き戻される。
 鳴いたのは、厳つい軍服男性にお腹を吸われまくっているブリティッシュロングヘアっぽいネコだ。
 このネコこそ、私の後頭部に直撃した張本人だった。

(今でもまだ、夢を見ているんじゃないかって思う……)

 あの出来事をきっかけに、自分が時空を超え、生まれ育ったのとは異なる世界に転がり込んでしまった──なんて。
 訳ありの私とネコを庇護することになったのは、ベルンハルトなる王国だった。
 半年前、やたら豪奢なベッドの上で目を覚ました私の側には、元凶たるネコと……

「タマ、さっさと吸わせろ」

 今現在とにかく私を吸いたいらしい、この金髪碧眼のイケメンがいた。
 私は彼の胸に両手を突っ張って距離を取りつつ叫ぶ。

「か、顔がいいからって、何を言っても許されるわけじゃないですからねっ!?」
「タマが最初に言ったんだろうが。事もあろうに、初対面の私に向かって」