「お、おい! メル! そのモフモフの子、いいな! 実に、いい!」
「この子は、その……」

 悪意の塊のような男でも、子ネコの愛らしさには敵わないらしい。
 しかし、顔を赤らめてハアハアしている姿は、完全に危ないおじさんだった。
 実の娘のメルさんさえドン引きしているのが、背中しか見えなくてもわかる。
 
「そ、その子をこちらによこしなさい! お前にはもったいない!」
「いえ、でも……」
「何をぐずぐずしているっ! わしにも抱っこさせないかっ!!」
「そ、それは……」

 い! や! だ! 

 メルさんの背中に、そうデカデカと書かれているように錯覚した。

「子ネコちゃんをよこせっ !!」

 子ネコがついにメルさんの肩まで到達すると、焦れたヒバート男爵が手を伸ばしてくる。
 メルさんの背中がビクリと大きく震え、居ても立っても居られなくなった私が柱の陰から飛び出そうとしたのと──