「──メルか」
「あっ、ほんとだ、メルさんだ。昨夜はお疲れ様でした」
「殿下、タマコ嬢、お疲れ様でございます。お二人は相変わらず仲良しですね」
胸に片手を当てて優雅に礼をしたのは、白い軍服に身を包んだ男装の麗人、メルさんだった。
高い位置で一つに結んだストレートの黒髪が、頭を下げた拍子にさらりと美しく前に流れる。
この時、ネコはまだミケの肩に乗ったまま、後ろに集まった観衆に向かって機嫌良く鳴き声を披露していたが、子ネコ達は我先にとメルさんに飛び移った。
可愛い集団にミーミー擦り寄られてほくほくする彼女に、ミケは私を下ろしつつ問う。
「メル、何か急ぎの用か?」
「いいえ、殿下。ロメリア様の命で、妃殿下に書類をお届けに上がったのですが、急を要するものではございません」
「そうか、母上のところならばちょうどいい。タマを一緒に連れていってくれ」
「かしこまりました」
王宮の玄関はもうすぐそこだった。
昼間は開け放されている観音開きの巨大な扉の向こうに、青空が見える。
雨は、すでに上がっていた。
ミケが頭の上に乗っていたネコを下ろすと、その独演会にうっとりとしていた人々もようやく我に返る。
『ふふふぅん! 今日も絶好調じゃわい! 珠子、ちゃんと見とったか? 我のオンステージをっ!!』
「はいはい、見てた見てた」
人々がそそくさと持ち場に戻っていく中、ネコも私の腕の中に帰ってきた。
興奮冷めやらぬ様子のネコを宥めつつ、私はミケと向かい合う。
「ミケ、お茶の時間にまたお邪魔しますね」
「ああ」
「私が手巻きサンドを欲張った件は、皆さんには内緒にしててくださいね?」
「それは約束できないな」
ミケは小さく笑いながら、颯爽と玄関を潜っていった。
とたん、頭上から降り注ぐ日の光で彼の金髪がキラキラと輝く。
その神々しさにしばし見惚れていた私の横で、同じようにミケを見送っていたメルさんが口を開いた。
「あっ、ほんとだ、メルさんだ。昨夜はお疲れ様でした」
「殿下、タマコ嬢、お疲れ様でございます。お二人は相変わらず仲良しですね」
胸に片手を当てて優雅に礼をしたのは、白い軍服に身を包んだ男装の麗人、メルさんだった。
高い位置で一つに結んだストレートの黒髪が、頭を下げた拍子にさらりと美しく前に流れる。
この時、ネコはまだミケの肩に乗ったまま、後ろに集まった観衆に向かって機嫌良く鳴き声を披露していたが、子ネコ達は我先にとメルさんに飛び移った。
可愛い集団にミーミー擦り寄られてほくほくする彼女に、ミケは私を下ろしつつ問う。
「メル、何か急ぎの用か?」
「いいえ、殿下。ロメリア様の命で、妃殿下に書類をお届けに上がったのですが、急を要するものではございません」
「そうか、母上のところならばちょうどいい。タマを一緒に連れていってくれ」
「かしこまりました」
王宮の玄関はもうすぐそこだった。
昼間は開け放されている観音開きの巨大な扉の向こうに、青空が見える。
雨は、すでに上がっていた。
ミケが頭の上に乗っていたネコを下ろすと、その独演会にうっとりとしていた人々もようやく我に返る。
『ふふふぅん! 今日も絶好調じゃわい! 珠子、ちゃんと見とったか? 我のオンステージをっ!!』
「はいはい、見てた見てた」
人々がそそくさと持ち場に戻っていく中、ネコも私の腕の中に帰ってきた。
興奮冷めやらぬ様子のネコを宥めつつ、私はミケと向かい合う。
「ミケ、お茶の時間にまたお邪魔しますね」
「ああ」
「私が手巻きサンドを欲張った件は、皆さんには内緒にしててくださいね?」
「それは約束できないな」
ミケは小さく笑いながら、颯爽と玄関を潜っていった。
とたん、頭上から降り注ぐ日の光で彼の金髪がキラキラと輝く。
その神々しさにしばし見惚れていた私の横で、同じようにミケを見送っていたメルさんが口を開いた。