『ぐっふっふっ、いいぞぉいいぞぉ。そのまま珠子に依存しまくって、最後にはこのおネコ様に世界を差し出すがいい!』
「そうはさせない──ミケも、ベルンハルトも、この世界も、私が守るんだから」
「どうした、タマ。急に壮大なことを言い始めたな」

 背中に負ぶわれたまま意気込む私に、ミケが笑った。
 ネコの言葉を解さない彼には、酔っ払った私がうわ言でも言っているように思われただろうが、それでいい。
 異世界生物が世界征服を目論んでいるなんて知らせて、心労を増やしたくはなかった。

「安心してくださいね、ミケ。ネコの好きになんて、させませんからね」
「今夜は随分と頼もしいじゃないか、タマ」

 人目がないのと、酔って気持ちが大きくなっているのをいいことに、私はさらに目の前の金髪を撫で回す。
 ミケは、子ネコ達に戯れ付かれるメルさんみたいに、くすぐったそうに笑った。
 そんな私達を眺めて、ネコはなおもぐふぐふと品のない笑い声を上げていたが、ふいに何かに気づいて、にゃっ! と顔を輝かせる。

『極上の夜食、キタコレー!!』

 廊下の向こうから、侍従長が歩いてきた。
 大勢の使用人達を束ねる立場にあり気苦労の絶えない彼は、ネコ達に大人気だ。
 本日に至っては、なんかいい感じのワインを二本も掻っ払われたため、その犯人たるミケを見つけて塩っぱい顔になった。
 そんな侍従長に、ネコはさっそく猫撫で声を上げて擦り寄っていく。

『むっふっふっ……今夜も随分溜め込んどるじゃないかー? こりゃ、朝まで爆食いコースじゃな!』
「こんばんは、ネコさん。聞いてくださいよ。今日はとんでもない悪童に、秘蔵のワインを二本も奪われてしまいましてね」

 背中にしがみついた子ネコ達ごとネコを抱き上げた侍従長は、とんでもない悪童ことミケと、その背におぶわれた私を見て肩を竦めた。
 ネコはゴロゴロ喉を鳴らして侍従長の胸に額を擦り付け、ジャケットを毛だらけにしている。
 さらに、子ネコ達までじゃれつき始めると、いつも隙のない老紳士でさえもメロメロになった。
 ところが、一匹の子ネコが彼の袖口に顔を突っ込んで遊ぶ姿を目にし──