『はー、どっこいしょー。やれやれ、いい仕事をしたわい。ほれ、珠子! 母を労れい!』

 そう、足下で大儀そうに言うのを抱き上げて、私はぎょっとする。

「うわっ……ちょっとぉ! ひっつき虫、付いてるじゃない!」

 ネコの真っ白い毛に、私の元の世界の野山にもあったような、服にくっ付くタイプの植物の種子がいくつも絡んでいたのだ。
 辺りを見回してみると、ネコが東屋へ向かう際に分け入った茂みに生えていた。
 その事実と、ドレスが! ドレスがぁ!! と喚いている令嬢達を見て、私は合点がいく。

「あ、あなた……ご令嬢達のドレスにそれを付けてきたの!?」
『ぬははははっ! そのとーりっ! 集合体恐怖症のヤツなら失神するレベルで、びっしり付けてきてやったわいっ!』
「ひええ、最悪……オナモミっぽいのはともかく、このコセンダングサっぽいのは、トゲが残ってチクチク鬱陶しいやつ……」
『ふんっ! うちの珠子に意地悪をするような輩は、永遠にチクチクしとったらええんじゃいっ!!』
「「「「「ミーミー!!」」」」」

 息巻くネコに、子ネコ達も同意するみたいに鳴いた。
 どうやらネコは、娘認定した私のために令嬢達をこらしめてきたつもりらしい。
 しかし、ひっつき虫ビッシリの刑に処された彼女達も、黙ってはいなかった。