「ニャニャーン!」
「いや、人語で話しかけてくれ」


 中将コンビと遭遇したのは、少将達と別れてすぐの頃だ。
 メガネをかけたインテリヤクザっぽい中将と、額に向こう傷がある強面の中将は、ちょうど路地から大通りに出てきたところだった。
 なんでも、路地の奥にある退役軍人が営む工房で、ネコ達用の新しいおもちゃを作るのに必要な部品を調達してきたらしい。

「ニャウ! ニャウウーン!」
「ちょうどよかった。ネコの専門家であるタマコ殿のご意見を是非ともお聞きかせ願いたいです──と言っています」
「通訳するな。人語をしゃべらせろ」

 ミケのツッコみに磨きがかかっていくのに感心しつつ、私は元の世界で猫カフェに置いていたおもちゃを参考に、中将達にアドバイスをした。
 熱心にメモをとりながら私の話を聞いていた彼らは、これから二人でそれを作るつもりらしい。

「徹夜をしてでも完成させて、明日の出勤の際に持参しますね、殿下!」
「いや、徹夜するな。寝ろ」
「ニャウウーン! ウニャウニャー!」
「寝ろ。そして、人語を思い出せ」

 この翌日、目の下に隈を作りまくった中将達が、ものすごいスピードで走るぜんまい仕掛けのネズミのおもちゃを持参して、ネコ達を大興奮させる。
 ベルンハルト王国軍幹部の会議室では、またもやモフモフ大運動会が開催された末、大事な書類にもれなく肉球スタンプが押されたのだった。