店には、骨董品の他に、さまざまな装飾品が置かれていた。

「タマも何か買ってやろう。何がいい? お前はあまり装飾品には興味がないようだが……」

 オルゴールを店主に預けたミケが、気を取り直したように言う。
 それを聞いた私は、そういえば、と耳に手を当てた。

「こっちの世界で目が覚めたら、ピアスホールがなくなっていたんだけど……ネコ、何か知らない?」
『タマコ姉さん、ぴあすって何にゃ?』

 左の脇の下に、後ろからズボッと顔を突っ込んできた元祖チートにピアスの説明をすると、彼はたちまち震え上がった。

『か、体に穴を開けて金物を通すにゃ? 何でそんなことするにゃ!? 痛いにゃんっ!!』
「いや、耳たぶはそんなに痛くは……」

 すると、イカ耳になった元祖チートの頭にのしのしと乗っかってきたネコが、私をじとりと見て言う。

『時空の間でバラバラになったお前の体が再生される時に、不要な穴も塞がったんじゃろ』
「そっかぁ……せっかく空けたのにな……」

 こちらの世界では──少なくとも、ベルンハルト王国とラーガスト王国では、体に穴を空けて装飾品を付けるという文化はないらしく、ピアスをしている人間は見たことがない。
 そのため、ピアスホールがなくなったことを私が残念そうにしていると、ネコだけではなくミケまで怖い顔になった。

『我がせっかく再生させてやった体に、また穴なんか空けたら承知せんぞ!』
「タマ、装飾のために体に穴を開けるなんて、私も許さないぞ」

 ピアス厳禁! なんて、古風な考えの親に説教されている気分になったが……

「実の両親には、説教どころか興味を持ってもらったこともないから、新鮮です」

 そう呟くと、ミケにはひたすら頭をなでなでされ、ネコには赤くなるまで頬をザリザリ舐められた。
 この後、ピアスホールがなくても付けられるイヤーカフのようなものを、ミケが自ら選んで買ってくれた。