「おや、殿下。タマコ殿とおでかけですか」
ミットー公爵との邂逅が、彼を豹変させてしまった。
『うにゃー! ミットーさん! ミットーさんにゃー!!』
「あっ、こらっ……!」
ミットー公爵に突撃しそうになった元祖チートを、ミケがリードを引っ張って止める。
しかし、ミケの筋力ではなく、リードの強度に先に限界が来た。
『ミットーさぁああんっ!!』
「おやおや」
リードを引き千切って走り出した大型肉食獣に、周囲の人々は騒然となる。
ダイナミックにじゃれつかれたミットー公爵の首も、ゴキャッ! とすごい音がした。
本人は笑顔のままだが……大丈夫だろうか?
代わりに、ふぎゃーっ! と凄まじい悲鳴を上げたのは、ミットー公爵に抱っこされていた小さい方のチートだ。
彼の怒りの鉄拳……いや、怒りの高速猫パンチが、元祖チートの額に炸裂する。
『おバカー! お前デカいんだにゃ! ミットーさんにじゃれる時は、 そっと優しく! お豆腐を持つ時みたいにしろにゃーっ!』
『んにゃあ! ごめんにゃさいにゃ! おれ、うれしくって、つい……おとうふって、何にゃ?』
小さいチートに眉間を滅多打ちにされて、元祖チートはイカ耳になっている。
それを遠巻きに見ている人々は、言葉を解さずとも彼らの力関係があべこべなのを察したようだった。
そんな中、王妃様と同じくらいの年頃の淑女が涙目の元祖チートに声をかける。
「あらあら、まあまあ。あなたは本当にこの人がお好きですのね」
彼女はにこにこしながらそう言うと、右に傾いていたミットー公爵の首を両手で掴み、力尽くで真っ直ぐに戻した。
ゴキャッ! とまたもやすごい音がしたが……本当に、大丈夫なのだろうか?
淑やかさと豪快さを兼ね備えるこの女性は、ミットー公爵の奥さんだった。
総督府に残った准将の身を案じる夫人を、気晴らしに町に連れ出したのだという。
「大きいチートちゃんも、今度うちに遊びにいらしてね」
『はいにゃ、奥さま』
ミットー公爵夫人は、元祖チートの巨大な頭を平然と撫でた。
さすがはミットー公爵の奥さん──いや、さすがはロメリアさんのお母さんと言うべきか。
肝が据わりまくっていた。
ミットー公爵との邂逅が、彼を豹変させてしまった。
『うにゃー! ミットーさん! ミットーさんにゃー!!』
「あっ、こらっ……!」
ミットー公爵に突撃しそうになった元祖チートを、ミケがリードを引っ張って止める。
しかし、ミケの筋力ではなく、リードの強度に先に限界が来た。
『ミットーさぁああんっ!!』
「おやおや」
リードを引き千切って走り出した大型肉食獣に、周囲の人々は騒然となる。
ダイナミックにじゃれつかれたミットー公爵の首も、ゴキャッ! とすごい音がした。
本人は笑顔のままだが……大丈夫だろうか?
代わりに、ふぎゃーっ! と凄まじい悲鳴を上げたのは、ミットー公爵に抱っこされていた小さい方のチートだ。
彼の怒りの鉄拳……いや、怒りの高速猫パンチが、元祖チートの額に炸裂する。
『おバカー! お前デカいんだにゃ! ミットーさんにじゃれる時は、 そっと優しく! お豆腐を持つ時みたいにしろにゃーっ!』
『んにゃあ! ごめんにゃさいにゃ! おれ、うれしくって、つい……おとうふって、何にゃ?』
小さいチートに眉間を滅多打ちにされて、元祖チートはイカ耳になっている。
それを遠巻きに見ている人々は、言葉を解さずとも彼らの力関係があべこべなのを察したようだった。
そんな中、王妃様と同じくらいの年頃の淑女が涙目の元祖チートに声をかける。
「あらあら、まあまあ。あなたは本当にこの人がお好きですのね」
彼女はにこにこしながらそう言うと、右に傾いていたミットー公爵の首を両手で掴み、力尽くで真っ直ぐに戻した。
ゴキャッ! とまたもやすごい音がしたが……本当に、大丈夫なのだろうか?
淑やかさと豪快さを兼ね備えるこの女性は、ミットー公爵の奥さんだった。
総督府に残った准将の身を案じる夫人を、気晴らしに町に連れ出したのだという。
「大きいチートちゃんも、今度うちに遊びにいらしてね」
『はいにゃ、奥さま』
ミットー公爵夫人は、元祖チートの巨大な頭を平然と撫でた。
さすがはミットー公爵の奥さん──いや、さすがはロメリアさんのお母さんと言うべきか。
肝が据わりまくっていた。