ミケの提案により、ベルンハルト城の門前から続く城下町へと繰り出すことになった──その、イカれたメンバーがこちら。
 ミケ、ネコ、私、そして……

『おれ、人間の町を散策するの、初めてだにゃんっ!』

 ラーガスト王国の森から連れ帰った大型肉食獣レーヴェの、元祖チートである。
 ミケは、目の前にドシーンとおすわりをしてワクワクしている巨大猫を眺め、盛大なため息を吐いた。

「このデッカいのを連れ歩くのは、正直気が進まないんだが……」
『安心してほしいにゃん! おれ、人間噛まないし、いい子にできるにゃん!』

 幼少期をミットー公爵のもとで過ごした経験から、元祖チートは野生で育ったとは思えないほど理性的だ。
 人間に対しても友好的だし、何より軍のトップであるミケと言葉が通じる。
 そのため彼は、ベルンハルト王国軍預かりとなり、立派な首輪も進呈されていた。

「まあ、この体の大きさと獰猛そうな見た目が、万が一タマに不届な考えを持つ者がいた場合の抑止力にはなるだろう」
「私より、ミケのボディーガードにするべきでしょ。王子様なんですから」

 そんなこんなで、周囲の人々に二度見どころか三度見四度見されながら、私達は町へと繰り出した。
 しかし、よくよく考えれば、目立つのは体の大きい元祖チートばかりではない。
 ブリティッシュロングヘアっぽい、真っ白ふわふわの毛並みをしたおネコ様も──そして、このベルンハルト王国の王子にして、先の戦争を勝利に導いた英雄ミケも、人々の目を釘付けにした。
 元人見知りとしては、多くの視線に晒されるのは喜ばしくない。
 私は、ミケ達から距離をとって他人のふりをしようとしたが……

「──こら、タマ。離れるな。迷子になるぞ」

 ミケの百パーセント善意により、側に引き寄せられ、そのまま手を繋がれてしまったのだ。
 おかげで余計に注目を浴びるはめになったし、年頃の女の子達には眉を顰めてヒソヒソされてしまう。
 元祖チートの背中に陣取ったネコはそれを見て鼻で笑うと、ミケを振り返って言った。
 
『珠子はバブちゃんじゃからな! お前がしっかり面倒を見てやれいっ!』
「言われなくとも」

 元祖チートの方は、そんな私達のやりとりも、自分に集まる畏怖の眼差しもどこ吹く風。
 物珍しそうに辺りを見回しつつ、ミケにリードを預けて従順に歩いていたのだが……