「そういうわけだから、ミケランゼロ。よろしく」
「どういうわけですか。何がよろしくなんですか。もう、いやな予感しかしない……」

 うんざりとした顔をしたミケが、私を腕に抱き込んで国王様を睨む。
 私は、精神安定剤代わりらしい。
 宥めるようにミケの腕をポンポンすれば、黒い綿毛がまたわんさか飛び出し、ネコと子ネコ達がそれを食らい尽くした。
 国王様は、懲りずにレオにちょっかいを出しては猫パンチを食らいつつ言う。

「准将と一緒に、この城に戻ってくることになったんだよ」
「……誰が、ですか」
「トライアン君に決まっているだろう」
「──は!?」

 ミケは素っ頓狂な声を上げ、私は顔を輝かせる。
 国王様はそんな私達に向かい、眩いばかりの笑みを浮かべて言った。
 
「あの子、うちで預かることにしたんだ──ミケランゼロとおタマちゃんが、面倒を見てあげなさい」




 戦争終結からちょうど一年となったその日。

 ラーガスト国王となることが決まっているトライアン王子は、留学という名目で改めてベルンハルト王国の土を踏む。
 最後に見た時よりもぐっと背が伸びた彼の肩では……


「おひさしぶりです! お母さん、きょうだい──それから、珠子お姉ちゃんっ!!』


 真っ白い毛並みで耳の垂れた、スコティッシュフォールドっぽい子が目をキラキラと輝かせていた。



『この異世界ではネコが全てを解決するようです 〜ネコの一族になって癒やしの力を振りまいた結果〜』本編おわり