「ロメリアさん、もうすぐ准将がお戻りになるんですよね?」
「ええ、総督府の駐留隊員の交代に合わせて。あの兄の顔を見るのも半年ぶりですわね」

 ラーガスト王国の新国王に祭り上げられる予定のトラちゃんだが、後見人となったラーガスト革命軍の代表があまりに頼りない人物であったため、准将は心配して彼の側に残ったのだ。
 あれから、トラちゃんとは何度も手紙のやりとりをしたが、准将をそれこそ兄のように慕っている様子が窺えた。
 その准将がベルンハルト王国に戻ってきてしまうとなると……

「わああ……どうしよう! 心配になってきた! ミケ、トラちゃんは大丈夫でしょうか?」
「急に酔いが覚めたな、タマ。トライアンなら大丈夫だろう。ああ見えて、なかなか強かだしな」
『我の子も一匹ついておるから問題なかろう。きっと、あれがうまく立ち回っておるわい』

 ミケもネコも楽観的なことを言うが、私はトラちゃんが周りの大人達にまたいいようにされないか不安になる。
 伯父である革命軍の代表はいまいち信用できないし、手紙で知る限りではトラちゃんと母カタリナさんの関係が改善された様子もないのだ。

「トラちゃんがもう少し近くにいれば、安心できるんだけど……」

 すると、王妃様の隣に移動した国王様が、ロシアンブルーっぽいレオを両手で抱き上げ、頬擦りしながら口を挟んだ。

「よーし、よしよし! おじさんが、おタマちゃんの心配事を解決してあげようじゃないか!」
「えっ、ほ、本当ですか? どうやって!?」
『ふふふ……じょりじょりして実に不快ですね。やめてください』

 顔を輝かせる私と、前足で国王様の頬を押し退けるレオ。
 王妃様が、引ったくるようにしてレオを奪い返した。

「まあまあ、陛下。しつこく構うから嫌われるのですわ。おネコさんにも子ネコさん達にもレオにも──おタマちゃんにも」
「嫌われたくないよぅー」

 国王様はえーんと泣き真似をしてみせたものの、すぐに気を取り直す。
 そして、空いてしまった両手をミケに差し伸べて言った。