思わぬ声が降ってきて、私は一転、頭上を振り仰いだ。

「わあっ、ミケ!? 何でそこにいるんですかっ!?」

 私達がいたテラスのちょうど真上──二階のバルコニーの柵に両肘を突いて、ミケがこちらを見下ろしていたのだ。
 その肩に乗っかっていたネコが、ぴょんと柵を越えてくる。
 くるりと器用に身を翻し、私とトラちゃんが座っているベンチに着地したネコは、元祖チートの眉間に軽く猫パンチを入れた。

『おいこらー、デカいの! お前、我らがいるのに気づいとったじゃろうがっ!』
『気づいてたけど……空気を読んで黙ってたにゃ』

 ミケの後ろからは、ミットー公爵をはじめとするお馴染みの将官達も顔を出した。

「「「「「「わーい、タマコ殿ー」」」」」」

 まるで、ドッキリ成功とでも言いたげに、元気に両手を振ってくる。
 相変わらず可愛いおじさん達だ。
 ミットー公爵の肩の上には、小さい方のチートの姿もあった。
 そんな中、ミケは私とトラちゃんを見下ろして言う。

「タマ、先に断っておくが、盗み聞きしていたわけではないからな?」
「はわ……」
「おい、トライアン。嘘泣きはやめろ。タマが気に病む。それに、お前は途中から、我々が二階にいることに気づいていただろう」
「あははっ、バレちゃった」