「あの人は、僕より大人だし、強いでしょ! 他に、信頼できる人間だっていっぱいいる──タマコが側にいなくたって、平気だよっ!!」
『なんだなんだ、何事にゃん!?』
「ミー! ミーミーミー!」

 その剣幕に、私の膝の上に顎を乗せている元祖チートが目を丸くした。
 三匹の子ネコ達も気遣わしそうに、私とトラちゃんを見比べる。
 一番小さい子ネコは彼を宥めようとするように、しきりに頬擦りをした。
 私は、苦笑いを浮かべつつ小さく頷く。

「そう……そうだよね。私が側にいなくても、ミケは平気だろうね……」
「だったら!」
「でも……ミケに一番息抜きさせられるのは、私だって思ってるの」
「えっ……」

 人見知りだった頃の私は、他人の目を恐れ、息を殺すようにして生きていた。
 自己肯定感なんてマイナスに振り切っていたのだ。
 そんな私の心は、この半年の間に激変した。
 左脇腹の傷だけではなく心までも労わられ、慈しまれ、守られ──そして、名前をたくさん呼んでもらった。

(私という人間が、この世界に存在することを肯定してもらった)

 その筆頭が、ミケだ。
 私は肩を掴まれたまま、トラちゃんをまっすぐに見て言った。