このままラーガストに──自分の側に残ってほしい。
 トラちゃんからのそんなお願いに、一瞬口を噤んだが……

「ごめん……ごめんなさい、トラちゃん。それはできない」

 私はすぐに断りの言葉を返した。
 私達ただならぬ様子に気づいたのか、子ネコ達も大人しくなる。
 一番小さい子が、ニー、と高い声で鳴いてトラちゃんの肩に戻った。

「どうして……どうして、だめなの……?」

 くしゃり、とトラちゃんが泣き出しそうに顔を歪める。
 それを見るのは辛かったが、自分の答えがそうさせたのだと思うと目を逸らすわけにもいかなかった。
 そんな私の服の袖をぎゅっと握り締め、トラちゃんが震える声で問う。

「ねえ、タマコ、どうしてなの? あの人の……ミケランゼロのため?」
「うん」

 この時──即答した自分に、誰よりも私が驚いた。
 トラちゃんに慕われるのはうれしいし、彼がラーガストの国王として祭り上げられることや、母カタリナさんとの関係に悩んでいることは心配でならない。

(それでもトラちゃんの側に残らないと決めた理由が──ミケなんだ)

 その事実を、私は自分が反射的に口にした答えで知ることとなった。
 一方、トラちゃんは納得がいかない様子で、私の両の肩を掴んで言い募る。