「タマコ、ありがと……伯父さんや母さまではなく、僕の味方でいてくれて」

 トラちゃんが、はにかんで呟く。
 ただでさえ悩み多き年頃なのに、これ以上大人の勝手に振り回されるのは、何としても避けたいと思った。
 そんな彼にゆっくり話をしたいと言われて、私は二つ返事で頷く。
 総督府内は、ベルンハルト王国軍やラーガスト革命軍、ラーガストの民間人を含め、多くの人間が行き交っていた。
 鮮烈な登場の仕方をしたトラちゃんを見かけると、ラーガストの人々の中にはそれこそ神を前にしたように跪く者までおり、信心深いという国民性を実感する。

「ああ、新しい国王様……どうか、我らをお導きください」
「ラーガストを、もう一度繁栄させてくださいませ」
「ひいっ……レーヴェ、こわい……食べないで!」
『食べないって言ってるにゃん』

 巨大なレーヴェが一緒だったこともあり、人々の眼差しには畏怖も滲んでいた。
 多くの視線を浴びつつ、私達は何とか人気のない場所を見つけて出して腰を落ち着ける。
 そこは裏庭に面した一階のテラスで、木製のベンチが一つぽつんと置かれていた。
 元祖チートは最初、何かを気にするようにフンフンとしきりに匂いを嗅いでいたが……

『タマコ姉さん、ここって……うんにゃ。何でもないにゃん』
「えっ、何? めちゃくちゃ気になるんだけど……」

 私の膝に顎を乗せると、そのまま目も口も閉じてしまった。
 腑に落ちないものを感じつつも、耳の周りをマッサージしてやれば、ゴロゴロと喉を鳴らし始める。
 ライガーサイズなので頭だけでも重たいものの、うっとりと目を閉じて気持ちよさそうにしているのを見ると、足が痺れるくらいどうってことない気がしてきら。
 自然と頬を緩めた私の隣で、トラちゃんが重い口を開く。