「申し訳ありませんが、お断りします」
「そ、そんな……」

 左右の肩と頭の上に子ネコを乗せた私の答えに、ラーガスト革命軍の代表は愕然とした表情になる。
 彼が私にあることを頼んできたのは──そして、私がそれを即座に断ったのは、総督府に滞在して三日目のことだった。


 初日の騒動以降、誰もが忙しい毎日を送っていた。
 ミケや将官達は、ラーガスト王国軍の残党の取り調べや、駐留する武官の交代に伴う引き継ぎ作業などでてんてこ舞いだ。
 軍医であるロメリアさんは総督府内の医局と協力し、ベルンハルト王国軍のみならず、ラーガスト革命軍及び残党、民間人を含め、健康チェックに勤しむ。
 処分保留中のメルさんは、逃亡の恐れはないということで、従来通りロメリアさんの護衛兼助手として働いていた。
 私もネコ達と手分けして、多忙ゆえに疲れもストレスも溜めまくっている彼らを癒やして回る。
 この日は、ネコはミケ、チートはミットー公爵、ソマリはロメリアさんとメルさんと行動をともにしていた。
 そんな中、私が残りのメンバーを連れていたところ、総督府の廊下で革命軍の代表に呼び止められたのだ。

「そういえば、タマコ殿。マルカリヤン様に面会していらっしゃったそうですね?」

 そう尋ねるのは、革命軍の代表に同行していたベルンハルト王国軍の大佐だ。
 彼は私と、私の謝絶にショックを受けている様子の革命軍の代表にさりげなく距離を取らせた。

「「「ミー! ミーミー!」」」

 私の肩や頭の上にいた子ネコ達が大佐の方へ飛び移り、三方から戯れつきつつその負の感情を食べ始める。
 この総督府の責任者を務めている彼も、ネコ達の糧をたんまりと溜め込んでいた。

「うふふふ、相変わらず懐っこくて可愛い子達だねぇ……それで、タマコ殿。マルカリヤン様のご様子はいかがでしたか?」

 子ネコ達にデレデレしながら、大佐が問いを重ねる。
 私は、彼の後ろでまだ何か言いたそうにしている革命軍の代表から目を逸らして答えた。