『ひいっ……た、たぁああまこおおーっ!! おまっ……おまおまお前ぇ! 何をするんじゃああっ!!』
「何って、毛玉を取ってあげただけ……あっこれ、ネコの赤ちゃんか」

 ネコが毛を逆立てて鳴き喚く中、その言葉を解さないミケや将官達は目を丸くした。
 一方、ネコから引き剥がしたばかりの毛玉は、まだゴルフボールほどの大きさだったが、すぐにつぶらな瞳が現れてぱちくりし始める。

「「「「「「か、かわいいのが増えちゃったーっ!!」」」」」」
「こいつも他の五匹のように、二、三日もすれば子ネコの姿になるのか? つくづく謎な生物だな」

 将官達が顔を輝かせる一方で、ミケだけが冷静に呟いた。
 ネコの前身である毛玉は雌雄の区別もない無性生物で、こんな風に芽生生殖によって仲間を増やしてきた。
 ただ、先の五匹は自然にネコから分離しており……

『きいいっ! ばっかもん! 我の分裂は、毛を千切れば済むような単純なものではないのだぞ! 産みの苦しみも知らん小娘がっ! このっ、このこのこのっ!!』
「あーん、もー、そんなにはしゃがないでくださいよー」

 生まれたての子は、ネコが毛を逆立てて背中を丸め、サイドステップを踏む姿に驚いたのだろう。
 人間達がそのやんのかステップに気を取られている隙に、ミットー公爵の左袖の中へ逃げ込んでしまった。
 一方、私に猫パンチを浴びせようとしたネコは、ミケに首根っこ掴んで引き離される。