「まあまあ、そんなに責めないであげてよ。結果的には、この子がベルンハルト王国軍と一緒に来てくれて助かったし……それに、トラちゃんがラーガストの人達の心を捉えるのにも貢献してくれたしさ」

 トラちゃんの登場シーンは、インパクトが絶大だった。
 なにしろ、巨大なレーヴェに跨って城門を飛び越えてきたのだから。
 ネコは元祖チートを見下ろしつつ、フンと鼻を鳴らす。

『まあな。国王を生き神として崇めておったという信心深いラーガスト民が、あの小僧に心酔するのに十分な光景じゃったろうよ』
「一緒に乗っていたのが、ロメリアさんだったのも大きいよね」

 まさしく美の結晶ともいうべきロメリアさんが、まるで守護神のごとくトラちゃんの背中を支えていた光景も、人々に鮮烈な印象を与えたに違いない。
 私はその場に膝を突くと、腕からネコを下ろした。
 そして、自由になった両手で、元祖チートの耳周りをマッサージするみたいに優しく揉む。

「急にお願いしたのに協力してくれて、どうもありがとうね。門を飛び越えてきたのも、かっこよかったよ」
『うにゃ……褒めてもらえると、うれしいにゃあ……』

 耳周りは、猫が撫でられて喜ぶことの多いポイントの一つだ。
 ライガーサイズの超特大猫ちゃんも、ゴロゴロと気持ちよさそうに喉を鳴らした。