「王都では、軍人崩れによる窃盗や暴力事件が多発していると聞きます! 警備のために部隊を派遣すべきではないでしょうか!」
「その役目は、ラーガスト革命軍が担うべきだ。ベルンハルト王国軍が王都を巡回していては、民間人との間で軋轢を生みかねない」

 息子である准将の意見をぴしゃりと一蹴したミットー公爵の顔には、普段のような温厚さはない。
 ネコや子ネコ達に容易くメロメロにされる可愛いおじさん達──ベルンハルト王国で目を覚まして以降、私が抱いていた将官達に対する印象は、一気に崩れ去った。
 彼らの上司であるミケはというと、紛糾する会議の様子を目を据わらせて眺めている……のはまあ、いつものこと。 
 敗戦国であるラーガスト王国を復興させるため、その援助を巡る方針でもめている、というのは理解できる。
 けれど、私は思い切り部外者だ。
 どうしてこんな状況で招き入れてくれちゃったの!? と必死に目で抗議するが、ミケは肩を竦めただけだった。

「と、とにかく、お茶を淹れたら、とっとと退散しよう……」

 私は自分に言い聞かせるみたいに呟くと、お茶の用意をするためにネコを足下に下ろした。
 そのお腹の毛の間から、王妃様にベッタリの子を除いた四匹の子ネコがポテポテと床に落ちる。
 私の肩に乗っていたチートも、音もなく飛び下りた。
 今日ばかりは、彼らの出番はないだろうと思われたが……

『よっしゃあ! 行くぞ、子供達よ! おやつの時間じゃあ!』
『ミットーさんは、俺のだからにゃ! かーちゃんにだって、きょうだいにだって、譲ってあげないにゃん!』
「「「「ミーミー! ミーミーミー!」」」」

 ネコ一家は、いつにも増してやる気満々。
 一斉に、将官達に向かって駆け出したではないか。

「ちょっ、ちょちょちょ、ちょっとぉ!?」

 私はポットをワゴンに戻して慌てて彼らを止めようとしたが、時すでに遅し。