「わーん、ミケー! こわかったー……けど、いいこと聞いたんですっ! あの王太子さん──お金、隠し持ってますよっ!!」
「この状況で第一声がそれか!? まったく……無茶をしないでくれ!」

 柵に背を預けて座り込んだ彼が、私をぎゅうと抱き締めて安堵のため息をつく。
 頭頂部に鼻先を埋めて吸われるのも厭わず、私もその胸に全力でしがみついた。

「このっ……」

 頭に血が上った様子のマルカリヤンが、腰に提げていた剣を抜き、振りかぶる。
 柵の前に座り込んでいたミケは素早く私を背後に押しやり、膝立ちになって剣を抜いた。
 頭を叩き割らんばかりの勢いで振り下ろされた剣を、彼は横向きにした刃でもって受け止める。
 ガツッと鋼と鋼が打ち合う音とともに、周囲は騒然となった。
 剣を抜いてバルコニーに踏み込んでこようとする准将や大佐を、カタリナさんとメイドの少女を人質にしたマルカリヤンの部下が牽制する。
 革命軍の代表は相変わらず頼りにならないものの、飛び出して行こうとするトラちゃんを抱き締めて必死に止めていた。
 怒りに燃えるネコはマルカリヤンに飛びかかろうとしたが、さっき弓矢を番えてミケに伸されたその部下が起き上がってきてしまう。

『って、させるかーい! 貴様はもうちょっと寝とけいっ!』
「もふんっ!」

 マルカリヤンの方に加勢されてはたまらない。
 すかさず、ネコはその顔面にモフモフボディーアタックを食らわせた。
 幸せそうな声を上げて、マルカリヤンの部下が再び床に転がる。
 その間も、ミケとマルカリヤンの鍔迫り合いが続いていた。