ラーガスト王国軍の残党を下したベルンハルト王国軍が、凱歌をあげる。
 開門! 開門! と叫ぶ声も聞こえた。
 しかし、総督府内にいた者達は、三階バルコニーにいた私達と違って状況が見えていない。
 すぐさま門を開けていいものか、彼らが迷っていると……

「──ごめんあそばせ」

 ちょっと敷居を跨ぐだけみたいに言って、門を飛び越えてくる者がいた。
 精巧なフランス人形みたいなド美人──ロメリアさんだ。
 彼女に後ろから抱きかかえられるようにして、トラちゃんも一緒である。
 問題なのは、二人を乗せているのが馬ではなく……

『──お邪魔しますにゃん!』
「レ、レーヴェだぁあ!」
「助けてえっ! 食べられるうううっ!!」

 大型の肉食動物レーヴェだったことだ。「うわーっ、スゴいの来ちゃった!」
「意味不明すぎる……」
『ぎゃーはははっ! 見ろ、あいつら! 敵も味方もドン引きさせたぞ!」 三者三様の反応をする私とミケとネコとは違い、マルカリヤンをはじめとした他の面々は呆気に取られて言葉も出ない様子である。
 ともあれ、ロメリアさんとトラちゃんが跨っている、あのライガーサイズの……

「ひいいっ! こ、来ないで! 食べないでぇ!」
『食べないにゃ! おれ、もう人間は噛まないにゃ!』

 しかも、怯える人間達に対して心外そうにしている、語尾が〝にゃ〟のレーヴェには見覚えがあった。
 総督府に来る途中の森で出会った、ミットー公爵に育てられた過去を持つ雄の個体──元祖チートだ。
 ロメリアさんが門番達を急かして門を開けさせ、ベルンハルト王国軍が堂々と入場してくる。
 早速、三階バルコニーにミケの姿を認めて飛び上がらんばかりに喜んだのは、お馴染みミットー公爵をはじめとする将官達だった。

「「「「「「きゃー、殿下ーっ! ご無事でーっ!!」」」」」」

 黄色い声を上げて両手を振るおじさん達に、苦笑いを浮かべて手を振り返すミケは、ファンサするアイドルみたいだ。とてつもなく顔がいい。

「「「ミィイイイイイ!!」」」

 将官達に預けられていたらしい三匹の子ネコ達も、私やネコを見つけて大喜びだ。
 するとここで、ようやく我に返ったマルカリヤンが叫ぶ。