「……っ、ははっ、あははははっ!」

 いきなり声を上げて笑い始めた。
 私はぎょっとし、ミケが眉を顰める。
 カタリナさんを人質に取られて動けない革命軍の代表や、その背後で状況を見守っていた大佐も顔を強張らせた。

『なーにがおかしいんじゃい! いいから、さっさと我の娘を離せいっ!!』

 ネコは凄まじい形相でそう叫び、ミケの肩の上で毛を膨らませて、フーッと威嚇する。
 ひとしきり笑ったマルカリヤンはそんな一同を見回すと、酷薄そうな笑みを浮かべた。

「ご高説を賜ったところで申し訳ないのですが、ミケランゼロ王子殿下──平穏な日々など、まだ程遠いわ」

 取り繕うのをやめた彼は、私を捕まえていない方の手を、さっとバルコニーの向こうへと差し伸べる。
 このバルコニーからは、総督府の正門を経てずっと先にある丘──最終決戦でベルンハルト王国軍が本陣を敷き、私が異世界転移してきたあの丘まで見渡せた。


「お誂え向きの特等席に役者がそろったものだ。見ろ、あれを──」