「あの毛の長い小動物といい、お前といい……ベルンハルトはなかなか面白いものを飼っているではないか」
「あ、あのっ……吸うのっ……やめてもらって、いいです、か?」
 
 ミケに吸われるのも普通に恥ずかしいが、嫌な気分にはならない。
 一方、マルカリヤンが相手だと、嫌悪感と恐怖心ばかりが沸き起こってきた。

「ふん……髪の手触りも悪くない」
「な……なでなでするのもっ……やめてもらって、いいです、か!?」

 何やら猫を愛でるみたいに頭を撫で回されるが、彼にはそもそも心を許せる要素が皆無なのだ。
 私が本当の猫だったら、今頃イカ耳になっていることだろう。

『おいこら、貴様ぁ! 我の娘に気安く触れるなっ!!』
 
 マルカリヤンの部下達にモフモフされているネコが、身を固くしてブルブルする私に気づいて、ふぎゃーっ! と抗議の声を上げる。
 しかし、ネコの言葉を解さないマルカリヤンは、鼻で笑っただけだった。

「何だかわからんが、気に入った。お前と、そこのうるさい小動物は、戦利品としてもらい受けよう」
「こ、ここ、困りますっ!」
「なに、不自由はさせんぞ。国庫は革命軍に掻っ攫われたが、私財は隠してあったからな」
「えっ、お金……? か、隠し財産、あるんですか?」

 まさかの耳寄り情報に、私は思わずマルカリヤンをまじまじと見上げる。
 敗戦国の王太子の私財なら、戦勝国が賠償金として回収してしまっていいのではなかろうか。
 これはぜひともミケに教えてあげなければ、と思っていた時だった。