「──峠道が塞がっている、だと?」



 息急き切って戻った武官からの報告に、ミケランゼロは険しい顔になった。
 件の峠道は、国境から総督府までの最短経路であり、現在ミットー公爵が率いているであろうベルンハルト王国軍の一行もここを通ってやってくる計画なのだ。
 四日前、要塞の手前の山道も塞がっていて苦労をしたが、あれは前日に降った雨が原因だった。しかし……

「自然災害ではなく、人為的な要因でしょう。おそらくは破城槌のようなもので崖を崩したのではないかと推測されます」

 現場を見てきた武官の言葉に、総督府の長官執務室に集まった面々──ベルンハルト王国軍元帥ミケランゼロを筆頭とした、大佐以下総督府に赴任中の将校、そしてラーガスト革命軍幹部を含めた十数名は重々しい雰囲気になった。
 何のために、わざわざ崖を崩して峠道を塞いだのか、推測するのは容易だった。

「ベルンハルト王国軍の到着を遅らせ、その隙に総督府に入った革命軍を奇襲するためだろうな」

 そう呟いたミケランゼロはこの中では最年少だが、他の者達の意見も一致している。
 敵は、ラーガスト王国軍の残党と考えて間違いないだろう。
 本日総督府にて、ベルンハルト王子と革命軍の代表が会談を行うという情報が、どこから漏れたのかはわからないが……