「革命軍の代表は、もう到着しているのか?」
「はい。一昨日、小隊とともに総督府に入られ、一通りの話し合いは済ませております」
「一昨日、か。ではやはり、昨夜こそこそしていたという連中は、革命軍ではないな」
「ラーガスト王国軍の残党でしょうか。近頃王都の方では、親衛隊の生き残りや傭兵崩れが革命軍への抵抗運動を行なっている、と小耳に挟んではおりますが……」

 予定通りであれば、二、三時間もすればミットー公爵率いるベルンハルト王国軍が到着する。
 ミケはそれを待つ間に、大佐や革命軍の代表を交え、今後の対応を協議することに決めた。
 私とネコはその間、大佐の部下である女性中尉に預けられたのだが……

「はわわわ、おネコ様っておっしゃるんですかぁ? こんな尊い存在……生まれて初めて出会いました!」
『ぬっふっふっ! そうじゃろうそうじゃろう! お前、なかなか見る目があるではないか! 褒美に、好きなだけモフモフしてよいぞ!』
「ああっ……なんと素晴らしい手触り! なんて芳しい香り! 心が洗われるようです……!」
『にゃーははははっ! くるしゅうない! くるしゅうないぞ!』

 初見では、メルさんを彷彿とさせる中性的で洗練された印象だった彼女も、ネコを見ると瞬く間にメロメロのデレデレのフニャフニャになった。
 おかげでさらに機嫌のよくなったネコを連れ、私はひとまず国王様に与えられた役目を果たすため、総督府のあちこちを慰問に回ることにする。
 その途中で、一晩お世話になった老夫婦の孫の居場所にも案内してもらった。
 預かってきた焼き菓子を渡すためだ。
 あの親切な老夫婦の孫らしく、たいそう人の良さそうな青年だった。
 祖父母がベルンハルト王子を助けたと聞いて驚いていたが……

「そうですか、祖父が腰を痛めて……。教えてくださり、ありがとうございます。明後日は仕事が休みなので、祖父母の様子を見に帰ります」

 そう言ってネコを撫でた彼も、ほとんど負の感情を抱えてはいなかった。
 それから、さらに一時間ほど総督府内を回る。
 そんな私達におずおずと声をかけてきたのは、トラちゃんと同い年くらいに見えるメイドだった。