『ぬわーはははは! 寄越せぇ! お前の真っ黒いのを、寄越せぇ! ぜーんぶ、寄越せぇえええっ!!』
「おやおや、こんなに懐かれるなんて照れますなぁ。私は小動物には不人気なんですが」
『ぐへへへへ、おっさん……人が良さそうな顔をして、なかなか溜め込んどるじゃないかぁ? おうおう! お前、腹ん中は真っ黒かぁー?』
「あっははは! うふふ! くすぐったいなぁ!」

 悪役っぽさ全開のネコと、ひたすらそれにデレデレする大佐に、ミケはスンとした宇宙猫の顔になった。
 これまで一人でこの光景を見てきた私も、遠い目をして問う。

「ネコの声……聞こえないままの方がよかったって、思ってますでしょ?」
「思ってる……」

 ミケが、労るみたいに私の頭をまたなでなでした。

『はー、食った食った。珠子、食い過ぎて動けんから抱っこせい!』
「はいはい」

 やがて、腹が満たされて機嫌の直ったネコが、腕の中に戻ってくる。
 負の感情を提供した大佐の方も、黒い軍服を白い毛だらけにされながらもほくほくしていたが、ミケが元祖チートから聞いた話をすると、とたんに顔面を引き締めた。