「あの崖を一緒に落ちてくれたような人が、私を蔑ろになんてするわけがないですもん」
そしてこれは、ネコにも言えることだ。
私は薪を置き場に積むと、いまだ猫背になっているネコを抱き上げ頬擦りする。
そのフカフカの毛並みは日干ししたお布団みたいな匂いがして、やはりほっとした心地になった。
「ネコ、一緒に来てくれてありがとう。ミケと私を助けてくれて、ありがとうね」
『な、なんじゃいなんじゃい……急にしおらしくしおって……』
「ネコって、本当にお母さんみたい……」
『みたいも何も、我は珠子の母だと言うとろうが』
当たり前のようにそう言うネコの毛並みに、顔を埋める。
私は、自分の体中から黒い綿毛が溢れ出すように錯覚した。
「母が……あなたみたいだったら、よかったのに……」
そう呟いた私の頭を、いつの間にか側にきていたミケがそっと撫でた。