私とミケは、思わず顔を見合わせる。
 ネコの摩訶不思議な力は、私達を一瞬でラーガスト側に移動させただけではなく──実は、ほぼ一日分、時間を飛び越えさせていた。
 つまり、トラちゃんが武官に襲われそうになり、それをミケが収めつつベルンハルト王国軍の心を一つにした出来事は、もう四日も前のことになる。
 あれが実は、言い方は悪いがやらせであり、事前に知らされていなかったことで疎外感を覚えた私は、ショックのあまり部屋に閉じこもったのだ。

「私の配慮が足りないばかりに、タマに悲しい思いをさせてしまったな……すまなかった」
「違う……違うんです! ミケが謝ることなんて、一つもないんです!」

 神妙な顔をして謝るミケに、私は慌てて首を横に振った。

「自分が仲間外れにされたわけじゃないって、少し考えればわかることなのに……私こそ、子供みたいに拗ねちゃって、ごめんなさい」
「いや、拗ねるのはかまわないが……タマの顔を見られないのは、私も辛かったな」
「本当にごめんなさい……それに、翌朝には絶対元気な顔を見せるって約束も、果たせなくて……」
「それこそ謝る必要はない。メルに攫われたのだから、不可抗力だ。とにかく、私がタマを蔑ろにすることなどありえないと……それだけは知っておいてくれ」

 ミケの言葉に、今度は私が神妙な顔をして頷く。
 メルさんに関しては、いち早くミケと情報を共有した。
 ヒバート男爵家には追って沙汰が下されるだろうが、私はメルさんの情状酌量を願い出るつもりでいる。
 彼女との短い旅も、今となっては笑い話だ。
 それに、おかげで得たものもあった。
 薪を拾って立ち上がった私は、改めてミケに向き直る。
 彼も、薪割り斧を下ろして私を見た。
 自他ともに認める筋金入りの人見知りだったのに、ミケと目を合わせるのに、私はもはや躊躇を覚えない。
 だって……