「タマ、調子はどうだ。今日は、傷が痛みはしていないか?」
言いながら彼が撫でた私の左脇腹には、半年前にできた傷跡がある。
後頭部への衝撃により猫カフェの窓から転げ落ち、ネコ曰く世界と世界の狭間を渡った私は──なんと、ミケの膝の上に着地した、らしい。
時は、西側で国境を接する隣国ラーガスト王国との最終決戦真っ只中。
ミケは父王に代わり、ベルンハルト王国軍本陣でその指揮を執っていた。
そんな緊迫の状況でいきなり現れた私に騒然とする中、今度は敵国の刺客が単身天幕に飛び込んでくる。
そのナイフの切先が吸い込まれたのは、ミケの甲冑の隙間ではなく、彼の膝に乗っていた私の無防備な左脇腹だった。
ネコはこの時、血を流す私に縋り付いて喉が潰れるほど鳴いたらしい。
図らずも、一国の王子にして国軍のトップを庇う形で負傷したことから、私はベルンハルト王国にて手厚い看護と保護を受け、現在に至る。
そんな経緯があるため、ミケは殊更私に対して過保護だ。
「全然問題ないですよ。先日は雨だったから、ちょっと疼いただけですので」
「それならばいいが……」
努めて明るい調子で答えれば、ミケは安堵したようなため息をついた。
言いながら彼が撫でた私の左脇腹には、半年前にできた傷跡がある。
後頭部への衝撃により猫カフェの窓から転げ落ち、ネコ曰く世界と世界の狭間を渡った私は──なんと、ミケの膝の上に着地した、らしい。
時は、西側で国境を接する隣国ラーガスト王国との最終決戦真っ只中。
ミケは父王に代わり、ベルンハルト王国軍本陣でその指揮を執っていた。
そんな緊迫の状況でいきなり現れた私に騒然とする中、今度は敵国の刺客が単身天幕に飛び込んでくる。
そのナイフの切先が吸い込まれたのは、ミケの甲冑の隙間ではなく、彼の膝に乗っていた私の無防備な左脇腹だった。
ネコはこの時、血を流す私に縋り付いて喉が潰れるほど鳴いたらしい。
図らずも、一国の王子にして国軍のトップを庇う形で負傷したことから、私はベルンハルト王国にて手厚い看護と保護を受け、現在に至る。
そんな経緯があるため、ミケは殊更私に対して過保護だ。
「全然問題ないですよ。先日は雨だったから、ちょっと疼いただけですので」
「それならばいいが……」
努めて明るい調子で答えれば、ミケは安堵したようなため息をついた。