『我の娘達に何さらしとんじゃこらぁああああっ!!』



 ふぎゃああああっ! という凄まじい叫び声とともに、真っ白い塊が飛んでくる。
 それがレーヴェの頭にしがみつき、鼻に噛み付いたのだ。
 ギャッ! と悲鳴を上げた巨体が仰け反り、地面に倒れ込んだかと思ったら転がり回る。
 それでもなおレーヴェに噛み付いたままの白い塊が、ネコだとわかったのと──

 ドッ……!

 茂みから飛び出してきた馬が、レーヴェの横っ腹を蹴り付けたのは同時だった。
 その背に跨っていたのは……
 
「──ミケ!!」

 淡い灰色の軍服を纏い、真っ黒い大きな軍馬に跨ったミケの金髪が、降り注ぐ太陽の光を浴びてキラキラと輝く。
 まるで天に遣わされた救世主のごとく神々しく現れた彼は、私と目が合うなり破顔した。
 
「タマ、無事か? 無事だな!?」
「ぶ、無事ですー!」

 恐怖も絶望もたちまちのうちに飛散し、私は声を弾ませて叫び返す。

「ミケ! レーヴェ、思ってたのと違いましたっ!」
「よし、タマ! その話は、後で詳しく聞こうな!」

 ここでようやくネコがレーヴェから離れ、ミケの馬の上へと飛び移る。