「……っ!!」

 私は、悲鳴を上げそうになった自分の口を、慌てて手で塞ぐ。
 ぶわわわっと全身の毛を膨らませたソマリが、メルさんの腕の中に逃げ込んだ。
 メルさんはそれを片腕で抱き締めつつ、ゴクリと喉を鳴らして唾を呑み込む。
 そうして、震える声で呟いた。

「──レーヴェです」
「レーヴェ? あれ、が……?」

 この世界に生息する、猫に似た大型動物レーヴェ。
 小麦色の毛並みにヒョウのような黒い斑点のあり、ベンガルを彷彿とさせる見た目をしている。
 以前、軍の会議室で話題に出た際、大きいとは聞いていたが……

「虎さんサイズだなんて、聞いてないっ……!!」

 せいぜい、サーバルキャットやカラカルくらいの大きさだと勝手に想像していた私は、度肝を抜かれた。
 あの時ミケが言った通り、私など簡単に、頭からバリバリ食われてしまうだろう。
 しかも……

「まずい、レーヴェは木に登れる……このままここにいては、逃げ場がなくなってしまいます!」
『なんですってぇええ!?』
「た、大変だっ……!」

 木の上が、安全圏ではなくなってしまった。
 そうこうしているうちに、ついにオオカミとレーヴェの戦いが始まった。
 十対一にもかかわらず、オオカミ達は劣勢を強いられている。
 キャンと鳴いて吹っ飛ばされるものから、首を一噛みされて声もなく絶命するものもまでいて、レーヴェ無双状態だ。
 か弱き人間達はその隙にこっそり木から下りると、一目散に走り出した。
 ところが……