「おはようございます、タマコ嬢。子ネコさんがいなくなった代わりに、こちらの綺麗な方がいらっしゃったんですが、もしかして……」
「おはようございます、メルさん。その、もしかしてだと思います。ミットー公爵閣下にお世話になっているチート同様──この子も、一晩のうちに進化したんでしょう」
『ええ、ええ。そのとおりですわ』

 金色の毛並みの子は、私とメルさんの考察に満足そうに頷いた。
 それからメルさんの肩へと飛び移り、その首筋に巻き付く。
 まるで、髪を切って無防備になった彼女の首を守る、上等の毛皮のマフラーみたいだ。

『昨日一日をかけて、この体をメルのモヤモヤでいっぱいにしたために、こうなりましたのよ』
「あー、確かに……。いっぱい食べてたもんねぇ……」

 メルさんは、不思議そうな顔をして金色の毛並みの子を見つめていたが、やがてくすりと笑って言った。 

「なんだかこの子……ロメリア様みたいですね?」
「あっ、確かに似てますね! 毛並みと瞳の色と……優雅でツンとしているところも!」
『それはそうでしょう。メルの心は、ロメリアでいっぱいですもの』

 最初に進化したチートは、ミットー公爵の中にあったレーヴェのイメージを写してあの姿になったと思っていたが……

(そもそもベースがネコだから、みんな猫っぽい姿になってるのかな……)

 そのネコのベースは、私の中にあった一般的な猫のイメージだ。
 原始の姿である真っ白い毛玉に猫のイメージが合わさって、ネコはあのブリティッシュロングヘアっぽい見た目になったのだろう。
 チートはレーヴェのイメージからベンガルっぽい姿に、そしてロメリアさんのイメージから出来上がったのが……