『姉様……珠子姉様、起きてくださいまし』
「ふが……」

 メルさんに攫われる形でミケやネコ達と離れ離れになった日の翌朝。
 私は、何やらプニプニしたもので鼻呼吸を封じられて目を覚ました。

「はわ……ぽっぷこーんのにおい……ごほうびだ……」

 それが肉球であることはすぐにわかったが、子ネコのものにしてはいささか大きい気がする。
 はたして、この尊いプニプニはいったい誰のものなのか。
 私はおそるおそる瞼を上げた。

『やっと、起きまして? おはようございます』 
「おはよー……わあー、キレイな猫ちゃんだー……って、どなた!?」
『あら、いやだ。珠子姉様ったら、可愛い妹の顔も忘れてしまいましたの?』
「いや、初めて見る顔なんですけど……いもうとぉ!?」

 私の妹を自称するかわいこちゃんは、たっぷりとした金色の毛並みと、翠色の瞳をした猫っぽい生き物だった。
 それが、仰向けに寝転んだ私の胸の上に寝そべり、右の前足を鼻に押し付けてくる。
 その猫っぽい妹越しに、すでに身支度を整えたメルさんが顔を覗き込んできた。