太陽が山際から完全に離れた頃、私とメルさんはすでに要塞から遠く離れ、次の町の外れにある森の中にいた。
二時間あまりぶっ続けで走り続けたにもかかわらず馬は存外元気で、湖のほとりに生えた草を呑気に食んでいる。
対する私はというと……
「お、おしりが、いたい……」
初乗馬の洗礼に苛まれていた。
元の世界ではもちろんのこと、こちらの世界にきてからも、直接馬の背に乗る機会などこれまでなかったのだ。
駆ける馬の揺れに合わせることができず、その反動をもろにお尻で受けてしまった。
「この痛みの感じ……絶対、打ち身だけじゃなくて、擦り剥けてるよぅ……」
痛いやら情けないやらで、私は泣きたい気分だったが……
「配慮が足りず、申し訳ありませんでした……」
目の前にもっと泣きそうな顔をした人がいるものだから、ぐっと涙を堪えた。
メルさんが、私の正面に跪いている。
あの綺麗なストレートの黒髪をばっさりと切り落としてしまい、より中性的な印象になった彼女は、ひどく追い詰められた表情をしていた。
朝焼けに染まる丘の上でナイフを取り出された時は身構えてしまったが、彼女はそれで私を傷つけることはもとより、脅すこともなかった。
ただ、己の退路を断つかのように髪を切り落とすと、再び私を馬の背に押し上げて走り出したのである。
二時間あまりぶっ続けで走り続けたにもかかわらず馬は存外元気で、湖のほとりに生えた草を呑気に食んでいる。
対する私はというと……
「お、おしりが、いたい……」
初乗馬の洗礼に苛まれていた。
元の世界ではもちろんのこと、こちらの世界にきてからも、直接馬の背に乗る機会などこれまでなかったのだ。
駆ける馬の揺れに合わせることができず、その反動をもろにお尻で受けてしまった。
「この痛みの感じ……絶対、打ち身だけじゃなくて、擦り剥けてるよぅ……」
痛いやら情けないやらで、私は泣きたい気分だったが……
「配慮が足りず、申し訳ありませんでした……」
目の前にもっと泣きそうな顔をした人がいるものだから、ぐっと涙を堪えた。
メルさんが、私の正面に跪いている。
あの綺麗なストレートの黒髪をばっさりと切り落としてしまい、より中性的な印象になった彼女は、ひどく追い詰められた表情をしていた。
朝焼けに染まる丘の上でナイフを取り出された時は身構えてしまったが、彼女はそれで私を傷つけることはもとより、脅すこともなかった。
ただ、己の退路を断つかのように髪を切り落とすと、再び私を馬の背に押し上げて走り出したのである。