「ありえませんわ」
ロメリアが、父の意見をぴしゃりと一蹴した。
彼女は挑むように、ミケランゼロをまっすぐに見つめて言う。
「メルが、おタマを傷つけることなどありえませんわ。己の命に代えても、必ず守ります」
「どうして、そう言い切れる」
「わたくしが、おタマを好ましく思っているからです。メルは、わたくしが大切に思うものは同じように大切にします。断言いたしますわ、殿下──おタマは無事です」
「そう、か……」
メルのことを最も理解しているのは、その父親であるヒバート男爵ではなくロメリアだ。
それを知っているミケランゼロは、ロメリアの断言に少しだけ肩の力を抜いた。
ところが、そんな彼らをじっと見つめて、ここで初めてトライアンが口を挟む。
「あのさぁ……本当は、この公爵令嬢が従者の女にタマコを攫わせたんじゃないの? 自分が、未来のベルンハルト王妃になるのに邪魔だったから」
今回ラーガスト王国に向かう一行の中でも、もちろんこの場でも最も年若い彼が、ロメリアを指差して冷ややかに言う。
大人達を見る彼の眼差しは、猜疑心に満ちていた。
ところが、自分以外の全員が、その発想はなかったという顔をするものだから、彼は眉間に皺を寄せて畳み掛ける。
「僕としては、ここにいるミットー公爵家の三人とも、共犯なんじゃないかって思ってるよ。だって、王妃を出した家はさらに権力が手に入るでしょう?」
ロメリアが、父の意見をぴしゃりと一蹴した。
彼女は挑むように、ミケランゼロをまっすぐに見つめて言う。
「メルが、おタマを傷つけることなどありえませんわ。己の命に代えても、必ず守ります」
「どうして、そう言い切れる」
「わたくしが、おタマを好ましく思っているからです。メルは、わたくしが大切に思うものは同じように大切にします。断言いたしますわ、殿下──おタマは無事です」
「そう、か……」
メルのことを最も理解しているのは、その父親であるヒバート男爵ではなくロメリアだ。
それを知っているミケランゼロは、ロメリアの断言に少しだけ肩の力を抜いた。
ところが、そんな彼らをじっと見つめて、ここで初めてトライアンが口を挟む。
「あのさぁ……本当は、この公爵令嬢が従者の女にタマコを攫わせたんじゃないの? 自分が、未来のベルンハルト王妃になるのに邪魔だったから」
今回ラーガスト王国に向かう一行の中でも、もちろんこの場でも最も年若い彼が、ロメリアを指差して冷ややかに言う。
大人達を見る彼の眼差しは、猜疑心に満ちていた。
ところが、自分以外の全員が、その発想はなかったという顔をするものだから、彼は眉間に皺を寄せて畳み掛ける。
「僕としては、ここにいるミットー公爵家の三人とも、共犯なんじゃないかって思ってるよ。だって、王妃を出した家はさらに権力が手に入るでしょう?」