ふみゃーっ、みぎゃーっ、とネコ達が騒ぎまくる中、人間達は額を集めた。

「──状況的に、メルがタマを連れ去ったと考えるのが妥当だろう」

 ミケランゼロが、そう結論づける。
 異を唱える者は、誰もいなかった。 

「そもそも普段のメルなら、軽い散歩のつもりであったとしても、ロメリアに何も告げずに要塞を出るなどありえない」
「ええ、殿下に断りもなく、タマコ殿を連れ出すようなこともしないでしょうね」
「では……最初から、殿下やロメリアに知られずにタマコ殿を連れ去るつもりで、機会を窺っていたということでしょうか?」

 加えて、メルが自ら切り落としたであろう黒髪の意味するところは……

「メルの、覚悟の証ですわ。おそらく、もうわたくしの下には戻らないつもりでしょうね」

 ずっと黙っていたロメリアがようやく口を開く。
 彼女は上着を脱ぐと、メルの髪を拾い上げて包んだ。
 まるで赤子を抱くようにそれを両腕で持った彼女は、苦々しい顔をして続ける。


「メルがわたくしの命以外で動くとしたら……それは、ヒバート男爵の指示としか考えられませんわ」