メルさんが駆る馬はぐんぐんと加速していき、あっという間に要塞から離れてしまう。
鬱蒼とした森を抜け、目的地である丘に着く頃──太陽が、山際から顔を出した。
丘が朝焼けの色に染まる一方で、その上に突っ立つ巨木の影はより黒く際立つ。
その影の中で、私は顔を青くして後退った。
「メ、メル……さん……?」
私に向かって一歩踏み出した相手は、朝焼けにより血を浴びたみたいに真っ赤に染まっていた。
俯いてしまっているため、表情は見えない。
ただ、その手に握られたナイフの刀身が、光を浴びてギラリと輝いた。
「タマコ嬢──申し訳ありません」
「メルさん、そんな……どうして……」
私はとっさに、今はもう痛みもないはずの左脇腹の傷跡を押さえる。
ザッ、と切り裂かれる音が響いたのは、その直後だった。
鬱蒼とした森を抜け、目的地である丘に着く頃──太陽が、山際から顔を出した。
丘が朝焼けの色に染まる一方で、その上に突っ立つ巨木の影はより黒く際立つ。
その影の中で、私は顔を青くして後退った。
「メ、メル……さん……?」
私に向かって一歩踏み出した相手は、朝焼けにより血を浴びたみたいに真っ赤に染まっていた。
俯いてしまっているため、表情は見えない。
ただ、その手に握られたナイフの刀身が、光を浴びてギラリと輝いた。
「タマコ嬢──申し訳ありません」
「メルさん、そんな……どうして……」
私はとっさに、今はもう痛みもないはずの左脇腹の傷跡を押さえる。
ザッ、と切り裂かれる音が響いたのは、その直後だった。