窓の向こうに見える空がようやく白み始める。
 ネコは結局、この部屋に戻ってくることはなかった。
 ネコ達が出ていった後、私はベッドに入ってはみたものの、結局まんじりともしないまま夜明けを迎えてしまった。
 枕元では子ネコが一匹、まだすうすうと気持ちよさそうに寝息を立てている。
 昨夜、気がつけば側に残って寄り添ってくれていた子だ。
 ヘソ天で眠るその子の真っ白いお腹に鼻を押し付けると、日干ししたお布団みたいないい匂いがする。

「ミケがやたらと吸ってくるってことは、もしかしたら私の髪もこんな匂いがするのかも……」
 
 そう呟いたところで、私は両手で顔を覆って盛大なため息を吐いた。

「ミケに会ったら、速攻で謝ろう、そうしよう……」

 昨夜、ミケと顔を合わせるのを拒んだものの、時間が経つにつれて私は冷静さを取り戻していった。
 そうして、疎外感の次は自己嫌悪に苛まれることになったのである。

「戦争中、ミケはきっと私には想像できないような死線を潜り抜けてきたはずだよね。そんなミケが、私に詳細を知らせないって判断したのなら、きっとそれが最善だったんだ……」

 すぐにそう思い至ることができず、ネコに言われたみたいに拗ねて部屋に引き篭もったなんて……