「できるわけがありません。あなたは傀儡ですもの。むしろ、ご自分に何かができるなんて自惚れない方がよろしいんじゃありませんこと?」
「ロ、ロメリアさぁん……」
「──今は、のお話ですわよ?」
「えっ……?」

 私は今度はトラちゃんと顔を見合わせる。
 そうだった。
 ロメリアさんは悪役令嬢っぽくてツンツンツンツンツンデレだが、本当は面倒見がよい姉御肌なのだ。

「殿下だって、三年を掛けて成長なさったのです。トライアン様も、これからたくさん学べばよろしい。そうしていつか、真の国王として立つ日が来るでしょう」

 ベルンハルト王国とラーガスト王国は敵対してきたが、今後それぞれの国を担うミケとトラちゃんの働き如何で関係を改善することも不可能ではないはずだ。
 もちろん、お互いへの敵愾心や恨み辛み払拭するのは簡単なことではないし、時間もかかるだろう。けれど……

「ベルンハルトとラーガストの人達が、今の私達みたいに隣に座ってお話ししたり、一緒に誰かを応援したりできる関係になれたらいいね? トラちゃん」
「うん……うん、そうだね」

 そうこうしているうちに、剣術大会の優勝者と準優勝者が揃ってやってきた。
 会場の熱気に煽られた子ネコ達が、再びぴょんぴょんと跳ね回る。
 私も彼らに負けじと飛び上がって、ミケとメルさんに手を振った。
 その拍子に膝から落ちたネコから向こう脛に猫パンチを食らったが、何のその。