『ギャオー!』

 まるで雷が落ちたかのような、耳をつんざく音がひびく。

 勢いで出てきちゃったけど……。
 この猫又、本当に大きいよ!

「このバカ! なんで出て来たんだよ!
 隠れてろって言ったろ!」
「主! 危険です!」

「でも、わたし……!」

 千景くんを助けたかったの――
 と言えたら、さぞカッコよかっただろうけど……。

『ギャオー!!』

 猫又を前にすると、あまりの迫力に気を失いそうだった。
 大きな体、赤い目、わたしをカンタンに飲み込みそうな広い口……。

「あ、あわわ……!」
「なに固まってんだよ! 早く逃げろ!」

 千景くん、わたしだって逃げたいよ!
 だけど、恐怖で足が動かないの!

「わたし、ダメダメだ……っ」

 カーくんに「取り柄がある」って言われて、まいあがってた。

 だけど……。
 わたしは、やっぱり誰の役にも立てない。

 おくびょうな、こわがり花りんのままなんだ……!